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another storys
第14章 蝶の見る夢【陽炎】
髪は短く、結うてない。
刈り込んだだけでパサパサと遊ぶ髪は何者なのかわからぬ。武士ではないが町人でも無さそうだ。
歳も若い。
着物は、きちんと洗ってはあるようだが、上物とは言えない。お世辞にも銭箱を積み上げて遊ばせろと言うようには見えなかった。
しかも。
薄い紗の掛かったような瞳。
キョロキョロと落ち着かず彷徨う視線。
目が見えないのだろうか?
横についた新造の袖を引く。
「あのお方…目が見えんせんのか…?」
小声で聞いた。新造が下座の芸者に聞きに降りよう、と腰を浮かせた時。
「そうだよ!」
客本人が、上座を向いて二ッと笑う。
声も小さい、席も離れており、座敷には三味、太鼓を始めとしたお囃子も響いている。その中でよもや聞こえていようとは。
思わず新造と顔を見合わせる。
「俺、目が見えねぇんだ。それがどうかした?」
どうかしたと言われたら、何と答えたら良いのかわからない。
ぱちぱちと目をしばたたかせた。
刈り込んだだけでパサパサと遊ぶ髪は何者なのかわからぬ。武士ではないが町人でも無さそうだ。
歳も若い。
着物は、きちんと洗ってはあるようだが、上物とは言えない。お世辞にも銭箱を積み上げて遊ばせろと言うようには見えなかった。
しかも。
薄い紗の掛かったような瞳。
キョロキョロと落ち着かず彷徨う視線。
目が見えないのだろうか?
横についた新造の袖を引く。
「あのお方…目が見えんせんのか…?」
小声で聞いた。新造が下座の芸者に聞きに降りよう、と腰を浮かせた時。
「そうだよ!」
客本人が、上座を向いて二ッと笑う。
声も小さい、席も離れており、座敷には三味、太鼓を始めとしたお囃子も響いている。その中でよもや聞こえていようとは。
思わず新造と顔を見合わせる。
「俺、目が見えねぇんだ。それがどうかした?」
どうかしたと言われたら、何と答えたら良いのかわからない。
ぱちぱちと目をしばたたかせた。