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第14章 蝶の見る夢【陽炎】
初会の座敷を終え、常磐は自室に帰る。

あの後は、気になることがあれば紙に書いて新造に託し、客に気取られぬように努めた。客の方も常磐に話し掛けて来ることはなく、終始楽しげに話していた。

調子が狂う。

常磐は言葉に出来ないもやもやしたモノを抱えて眠った。

袖にするか、馴染みと認めて床入りするか。

通常、通いの客なら二回目に来るのはいつかはわからぬ。ただ、それほど日を開けずに訪れるのが常だった。
だが、あのお客は居続けと聞いた。となれば、考える暇はない。

馴染みになる条件として、良い筋ではない。
積み上げた銭箱が、全部で幾らあったか知らぬが、それが全部だと言っていた。

ハナから銭箱の底を見せるような野暮な輩は、花魁の馴染みにはなれぬ。
常の客なら見栄を張り、ない袖を振っての登楼であったとしても、持っているフリをするものだ。
その嘘を見抜くかどうかも花魁の目利き次第。
最初から手持ちの金を全部見せるような男は知らなかった。

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