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another storys
第14章 蝶の見る夢【陽炎】
花魁のお職はとかく金がかかる。
自身の借金は着物や粧いの仕掛けでどんどん膨らみ、更には禿、新造の暮らしも花魁の肩に掛かっている。
安売りはできぬのだ。
望んでお職についたわけではない、とも思いながら、矢張りこの立場でなければ意に染まぬ客と床入りし、苦しんだであろうことは自明の理。
遣り手に、金子が幾らあったのかを聞いた。
座敷をかけるならせいぜいあと十日。
そこから花魁の揚げ代と祝儀を差し引いたなら七日分、といわれた。
居続けだから悩む暇はない。
だが、一度だけ。
たった一度だけならば…
あの、ごめんねと笑ったあの方ならば、この嘘で塗り込められた己の人生に、ひとひら真の花を咲かせてはくれまいか。
他の方とは違う、あの方ならば…
自身の借金は着物や粧いの仕掛けでどんどん膨らみ、更には禿、新造の暮らしも花魁の肩に掛かっている。
安売りはできぬのだ。
望んでお職についたわけではない、とも思いながら、矢張りこの立場でなければ意に染まぬ客と床入りし、苦しんだであろうことは自明の理。
遣り手に、金子が幾らあったのかを聞いた。
座敷をかけるならせいぜいあと十日。
そこから花魁の揚げ代と祝儀を差し引いたなら七日分、といわれた。
居続けだから悩む暇はない。
だが、一度だけ。
たった一度だけならば…
あの、ごめんねと笑ったあの方ならば、この嘘で塗り込められた己の人生に、ひとひら真の花を咲かせてはくれまいか。
他の方とは違う、あの方ならば…