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another storys
第14章 蝶の見る夢【陽炎】
四ツ刻(22時)が近付き、常磐と鷺は行灯を持った遣り手の先導で寝間に入る。

ふたりを部屋に残し、

「おしげりなんし」

と頭を垂れて、遣り手が下がっていく。

部屋にふたりになり、着物を脱いで鷺に寄り添うと、ぐっと力強く抱き寄せられた。

「なぁ。顔、触っていいかい?」

「顔、でありんすか…?」

「俺、目ぇ見えねぇからよ。あンたがどんな顔してんのか知りたい。」

「…あい…」

常磐はそっと目を閉じ、心持ち顎を上げる。化粧を施した顔の上を、確かめるように柔らかな指先が滑る。
ひとしきり触って確かめ、

「やっぱ別嬪だな?」

と笑った。

「ありぁとうおざいんす。」

そう言って微笑んだ常磐の唇を、鷺のそれが塞いだ。

そのまま、褥に横たわる。
鷺の唇が、柔らかな舌先が、唇から首筋に滑る。
途端に少し離れて。

「白粉ってなぁ匂いは甘いのに味は甘くねェな」

と眉を顰め、舌を突き出す。
不味かったようだ。
白粉を舐めたことがないから知らぬが、常磐は思わず噴き出した。
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