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another storys
第17章 四方山話【潮騒】
それでもそんなタエに浩二郎は懸命に尽くし、死ぬ間際までタエのことを心配していた。
病院のベッドの上で、酸素マスクの中微かに動く口に、孫が慌てて聞き取ろうとマスクを外して口元に耳を寄せる。
蚊の鳴くような声で
「儂が死んだら婆さんの面倒は誰が見るんや…儂は婆さんより先には死なれんのや…」
とうわ言のように呟いた。
その話をタエは自分がどれだけ想われていたか、と自慢気に語り、ええ旦那やの、と周りも感心する。
だが菊乃は知っていた。
お前が、首にヒモ付けとかんと人様に迷惑掛けるからやで、タエ…
浩二郎は確かに優しく思いやりがあった。そして常識もあった。
だからこそ、タエを野放しにしたら自分や子供が恥をかくと重々承知していたのだ。
まぁ、真実は兎も角、想われとったと思てるうちが花や、私からは何も言うまい。菊乃は素知らぬふりでお茶を飲んだ。
病院のベッドの上で、酸素マスクの中微かに動く口に、孫が慌てて聞き取ろうとマスクを外して口元に耳を寄せる。
蚊の鳴くような声で
「儂が死んだら婆さんの面倒は誰が見るんや…儂は婆さんより先には死なれんのや…」
とうわ言のように呟いた。
その話をタエは自分がどれだけ想われていたか、と自慢気に語り、ええ旦那やの、と周りも感心する。
だが菊乃は知っていた。
お前が、首にヒモ付けとかんと人様に迷惑掛けるからやで、タエ…
浩二郎は確かに優しく思いやりがあった。そして常識もあった。
だからこそ、タエを野放しにしたら自分や子供が恥をかくと重々承知していたのだ。
まぁ、真実は兎も角、想われとったと思てるうちが花や、私からは何も言うまい。菊乃は素知らぬふりでお茶を飲んだ。