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第17章 四方山話【潮騒】
其の三 郁男の恋


高校を卒業した郁男は、大阪の通信系の専門学校に入学した。
郁男は、子供の頃、岬にある灯台の看守になりたかった。灯台の横に住居を兼ねた看守小屋があり、夜、陽が落ちた後、灯台に灯を点して此処が何処であるのか、沖を行く船に知らせるのが灯台の役割で、それを担うのが看守の仕事だ。

灯台毎に灯り方が異なり、船はそれを頼りに、航海路から外れていないかを知る。標識のない海上で、それが如何に重要なことか。
郁男はその仕事に憧れた。

学校が終わると灯台に遊びに行っては、住居になっている看守小屋に入り浸り、夜の仕事に備えて朝から昼間寝て過ごす看守の親父が、起き出して支度したり、食事したりしている横で、話を聞くのが好きだった。

中学生の頃、その看守の親父に相談した。

「おっちゃんは、引退とか決まってるん?俺、次の看守になりたいんや」

看守の親父は軽く笑ってかぶりを振った。

「坊主はこんなもんになるな」

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