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第17章 四方山話【潮騒】

菊乃が嫁に行った時、私は二十二。
順当に行けば、その縁談は私に来た話やないんかと思う。けど、お父ちゃんもお母ちゃんも、私には何も言わんかった。そして菊乃が嫁ぐと教えられた。
菊乃の嫁ぎ先はげんじろうと呼ばれる、うちから歩いて五分ほどのとこにある家やったけど。
そこの息子の浩二郎は学校で、私の一級上やったから知ってた。
優しい男の子やったと覚えてる。けど、浩二郎はゼンエモンの娘を嫁に貰うたと聞いた。
そして、菊乃の旦那になるという浩二郎の兄のことはあんまり聞いたことがなかった。

噂でしか知らんけど、浩二郎のトコはお母さんとお姉さんがエラい人(大変な人)やと聞いたし、菊乃は自分から私の代わりになって嫁いだんかもしれん…後になってからそう思った。