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another storys
第17章 四方山話【潮騒】
其の六 弟
俺は常に二番目やった。
本当は三男らしいけど、長男は俺が生まれるずっと前に死んだということや。
四つ上に兄貴が一人。
次男やのに、上が居らんから跡取り跡取りと、爺さん婆さんが下にも置かん扱いで。
俺はといえば、おやつでも何でも兄貴の後。
兄貴だけ小遣いを貰うてたり、一人だけでっかい林檎を食うてたり。
俺やって欲しかったけど、分けてくれと頭を下げんのも癪で、要らんわい!と強がった。
お母ちゃんは俺が腹を空かせて、涙目んなって兄貴の背中を睨んどるのを見るたびに、
「ごめんな、啓三…」
と俺を抱き締めてくれた。
「お母ちゃんこんなモンしかやられへんけど、食べとき」
と、袂からべっこう飴を出して俺に握らせてくれた。腹の足しにもならん一粒のべっこう飴が、ものすごい嬉しくて。大事にしまっておいた。いつ食べよう、と偶に出しては眺め、また、机の引き出しにしまう。
俺は常に二番目やった。
本当は三男らしいけど、長男は俺が生まれるずっと前に死んだということや。
四つ上に兄貴が一人。
次男やのに、上が居らんから跡取り跡取りと、爺さん婆さんが下にも置かん扱いで。
俺はといえば、おやつでも何でも兄貴の後。
兄貴だけ小遣いを貰うてたり、一人だけでっかい林檎を食うてたり。
俺やって欲しかったけど、分けてくれと頭を下げんのも癪で、要らんわい!と強がった。
お母ちゃんは俺が腹を空かせて、涙目んなって兄貴の背中を睨んどるのを見るたびに、
「ごめんな、啓三…」
と俺を抱き締めてくれた。
「お母ちゃんこんなモンしかやられへんけど、食べとき」
と、袂からべっこう飴を出して俺に握らせてくれた。腹の足しにもならん一粒のべっこう飴が、ものすごい嬉しくて。大事にしまっておいた。いつ食べよう、と偶に出しては眺め、また、机の引き出しにしまう。