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another storys
第17章 四方山話【潮騒】
其の七 夢枕


ある朝、郁男の妻 あき子は、ドン!という衝撃音で目が覚めた。
思わず飛び起き、地震⁉︎と、辺りを見回すが、釣り照明はピクリとも動いていない。夢か、気の所為か…それにしては確かに感じたのだけど…と、首を傾げ、ふと思い出す。今日が、義母の菊乃を見送ってから、ちょうど五十日目であることを…

昔、母から、亡くなった人は四十九日が過ぎるまでは家に居るのだと聞いた。
五十日目に初めて成仏して天に昇るのだと。
おばあちゃん、天国へ行ったんやね…きっと、もう行くよ!って教えてくれたんや…そう、思った。

昨日、義母 菊乃の没後四十九日を迎えた。
親族一同集まっての法要は、告別式の時に纏める、という簡略化のスタイルを取ったが、家にお寺さんを迎えてお経だけはあげて貰った。

これでやっと肩の荷が下りた、という思いと、
何とも言えない寂しさが残る。

亡くなった人が、五十日目に旅立つ時、残された者の夢枕に立ち、言いたいことを残して行くのだ、とも聞いた。

今朝、あき子は菊乃の夢を観なかった。

「私には何も言うことないの、おばあちゃん…」

ぽつりと独りごちる。
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