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another storys
第17章 四方山話【潮騒】
嫁して四十数年、いろいろあったが、概ね上手くやってきたと思う。

菊乃の晩年、介護に奔走する中、自らも腰を痛めて重い物が持てなくなったり、夫の郁男も足を痛めて歩くのがやっとの身体になった。
そんな中、ベッドから車椅子に載せ換えたり、ベッドから簡易トイレに座らせたりする介助は難しく、県内ではあるが、車で二時間以上離れた場所に住む敬三が、家に来て介護を手伝ってくれた。菊乃の部屋に据えたベッドには敬三が寝てくれる。夜中に何かあれば、寝室の前まで来て知らせてくれた。

とは言え、自分たちの食事に加え、菊乃の介護食を三度三度準備するのも中々の手間で。
朝も夫婦2人なら、トーストを焼くのも、バターもジャムもセルフでどうぞ、と言えるが、義弟が居るとそうはいかない。毎朝卵を焼いてハムやベーコンと野菜サラダを添えるモーニングスタイル。
洗い物も増えるし、昼も夜も、敬三本人は

「あき子さん、気遣わんでええよ」

と言ってくれるが、そこはなけなしのプライドが許さない。
毎日、何作ろう…と常に考える日々だった。

無言で食事を終え、全部食べたら美味いということや、と亭主関白を気取る郁男と違い、

「コレ美味いわ!ウチでもやって貰おう!あき子さん、作り方教えて!」

と、郁男に比べるとオーバーとも思える反応を返してくる敬三に、作り甲斐を感じるのも事実。
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