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another storys
第17章 四方山話【潮騒】
足の悪い郁男一人では手に余る庭や畑の手入れも手伝ってくれるし、介護の面でも力強い助っ人だ。
介護の苦労も分かち合えるし、郁男の愚痴も言える。感謝しているし、居てくれないと困る、とも思う。
それでも、昔から頻繁に行き来があったわけでもない義理の弟といきなり同居することに、気苦労を感じないわけがなかった。
慣れない介護にストレスを感じ、娘に電話で愚痴を吐いたこともあったし、菊乃が寝たきりになる前は言い合うこともあった。
歳をとって身体が利かなくなるのだから仕方のない事だ、と頭で理解はしつつも、粗相の後始末をしながら、やんわりと本人に注意すると、歳をとって意固地になった義母は認めず、ピシャリと撥ね付けられる。
一度や二度なら我慢できても、それが毎日続くと心もすり減る。
若い頃から嫁いびりのような仕打ちを受けた事のないあき子にとって、菊乃に拒絶されるのも辛かった。
そんな、綺麗事では済まない介護を数年続け、看取った義母。
自分なりに精一杯尽くしたつもりだ。
褒めて欲しいのではない。
ただ、物言わぬ義母に語りかけ続けた自分に、最後に何かひと言喋ってくれてもよかったのに…とただ、切なく、寂しいものを感じた。
敬三が起きて来て、穏やかに挨拶を交わす。
「今朝な、お袋の夢観たわ」
「そうなん?何か言うてた?」
あき子は思わず尋ねた。
介護の苦労も分かち合えるし、郁男の愚痴も言える。感謝しているし、居てくれないと困る、とも思う。
それでも、昔から頻繁に行き来があったわけでもない義理の弟といきなり同居することに、気苦労を感じないわけがなかった。
慣れない介護にストレスを感じ、娘に電話で愚痴を吐いたこともあったし、菊乃が寝たきりになる前は言い合うこともあった。
歳をとって身体が利かなくなるのだから仕方のない事だ、と頭で理解はしつつも、粗相の後始末をしながら、やんわりと本人に注意すると、歳をとって意固地になった義母は認めず、ピシャリと撥ね付けられる。
一度や二度なら我慢できても、それが毎日続くと心もすり減る。
若い頃から嫁いびりのような仕打ちを受けた事のないあき子にとって、菊乃に拒絶されるのも辛かった。
そんな、綺麗事では済まない介護を数年続け、看取った義母。
自分なりに精一杯尽くしたつもりだ。
褒めて欲しいのではない。
ただ、物言わぬ義母に語りかけ続けた自分に、最後に何かひと言喋ってくれてもよかったのに…とただ、切なく、寂しいものを感じた。
敬三が起きて来て、穏やかに挨拶を交わす。
「今朝な、お袋の夢観たわ」
「そうなん?何か言うてた?」
あき子は思わず尋ねた。