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another storys
第18章 彼岸花【陽炎】

信吉が帰ってきていることに、るいも気づいていた。
家を出るときはなかったゴミがある。
煙草盆の灰が増えている。
そんな、些細な痕跡だけで信吉の存在を認識していた。
だがある日。
そういえば、ここ二、三日信吉の痕跡がない。
とうとう出て行ったのかな…と思いかけて、ふと床下の銭函を見た。
…やられた‼︎
独身の頃からコツコツと貯めてきた蓄えが、空になっていた。
ちょくちょく抜いていたのか、纏めて持ち逃げしたのか、それは判らぬが…
貯めていた金の代わりに銭函に入っていたのは、一枚の紙。
信吉の字で。
離別一札の事
一、今般双方勝手合を以及離
縁 然ル上者其元儀 何方縁組
いたし候共 私方に二心無
依之離別一札如件
亥十一月廿四日 信吉
おるいとの
と書かれていた。
※読み下し:離別一札のこと。一つ、今般双方勝手合を以て離縁に及び、然る上は其の元儀、何方に縁組み致し候とも、私方に二心無く、これにより離別一札くだんの如し。亥十一月二十四日。信吉。おるい殿。
家を出るときはなかったゴミがある。
煙草盆の灰が増えている。
そんな、些細な痕跡だけで信吉の存在を認識していた。
だがある日。
そういえば、ここ二、三日信吉の痕跡がない。
とうとう出て行ったのかな…と思いかけて、ふと床下の銭函を見た。
…やられた‼︎
独身の頃からコツコツと貯めてきた蓄えが、空になっていた。
ちょくちょく抜いていたのか、纏めて持ち逃げしたのか、それは判らぬが…
貯めていた金の代わりに銭函に入っていたのは、一枚の紙。
信吉の字で。
離別一札の事
一、今般双方勝手合を以及離
縁 然ル上者其元儀 何方縁組
いたし候共 私方に二心無
依之離別一札如件
亥十一月廿四日 信吉
おるいとの
と書かれていた。
※読み下し:離別一札のこと。一つ、今般双方勝手合を以て離縁に及び、然る上は其の元儀、何方に縁組み致し候とも、私方に二心無く、これにより離別一札くだんの如し。亥十一月二十四日。信吉。おるい殿。

