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another storys
第27章 帆掛舟【潮騒】
お義父さんもお義母さんも、もちろんええ顔はせんかったけど、三年、一郎が中学校を出るまで、子供の面倒を見てくれ、サカキの両親にも、親戚にも私から頼む、と何とか説き伏せて。
自分の両親にも相談をした。
お母ちゃんは、家の家計も苦しいに違いないのに、私と一緒に駆けずり回って親戚に頭を下げてお金を工面するのを手伝うてくれた。

妹のなけなしまで借りて、何とか大阪行きの旅券と、学校に行くお金だけ掻き集めた。
向こうで住むとこは、お父ちゃんが生家を頼って住込で働く口を探してくれた。

住むとこは料理屋をしとって、私は昼間学校で勉強して、夕方から閉店まで料理屋を手伝い、学校で習うたことの復習をして、二、三時間寝てまた学校に行く、という生活を続け、二年で何とか産婆の免状を取った。

一年は同じ感じで、産婆として働きながら料理屋も手伝ってお金を貯めた。

大阪は人が多い分、仕事も多かったけど、その分産婆も仰山居ったから、少し離れた芦屋に家を借りた。

芦屋や西宮は、まだまだ不便なとこもあったけど、電車もそれなりに整うとるし、大阪にも神戸にも出やすい。

働きながら生活はできるだけ切り詰めた。
けど、人に接する仕事やし、しかも相手は女性。
信用が第一やから、身なりだけはきっちりしとかんといかんかった。
清潔に、派手にならんように、小綺麗に、を常に心がけた。
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