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another storys
第27章 帆掛舟【潮騒】
正一郎さんが帰って、しばらくしてからのこと。
裏口から自宅に入ろうとしたら、木戸がうまいこと閉まらん。
難儀しとったら、通りがかった人が声を掛けてきた。
「どないしはりました?」
「それが…木戸が閉まらんのです。」
「ちょっと見せて。」
その人は木戸を調べて、
「この蝶番がイカれとるんです。これなら家に帰ったらありますから、すぐ直りますよ。」
「え?」
「産婆の先生ですやろ。ウチの家内がお世話になりましてな。滝本と言います。大工をしとります。」
「あぁ、大工さんですのん…ほんならお願いしてもよろしいかしら」
「お安いご用ですよ。」
裏木戸を開けたまま、家に入り、台帳で滝本さんを調べた。
滝本 楓さん、という人で、逆子で大層な難産やった人や。確かにご主人の職業は大工と書いてあった。
ご主人の名前は…善次郎さん。
ゼンジロウ、という響きに一瞬胸が痛んだ。
裏口から自宅に入ろうとしたら、木戸がうまいこと閉まらん。
難儀しとったら、通りがかった人が声を掛けてきた。
「どないしはりました?」
「それが…木戸が閉まらんのです。」
「ちょっと見せて。」
その人は木戸を調べて、
「この蝶番がイカれとるんです。これなら家に帰ったらありますから、すぐ直りますよ。」
「え?」
「産婆の先生ですやろ。ウチの家内がお世話になりましてな。滝本と言います。大工をしとります。」
「あぁ、大工さんですのん…ほんならお願いしてもよろしいかしら」
「お安いご用ですよ。」
裏木戸を開けたまま、家に入り、台帳で滝本さんを調べた。
滝本 楓さん、という人で、逆子で大層な難産やった人や。確かにご主人の職業は大工と書いてあった。
ご主人の名前は…善次郎さん。
ゼンジロウ、という響きに一瞬胸が痛んだ。