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another storys
第27章 帆掛舟【潮騒】
すぐに滝本さんが来てくれ、木戸を直してくれた。
助かりました、と礼を言うて、お代を聞いたら、大した仕事やないし、蝶番一つしか使うてないから代金なぞ要らん、と受け取ってくれず。
渡すの受け取れんのとしばらく押し問答した末、家に上げてお茶とお菓子を振る舞った。
「奥さんと赤ちゃん、お元気にしてはりますか?もぅ、娘さんも大きなったやろうねぇ。もうすぐ二歳でしょう。可愛い盛りやわ。」
「それは…三人目でまぁ、初めての女の子ですんで。上の子らにはお父ちゃんは小春には甘いと叱られますわ。」
はは、と頭を掻きながら笑うので、私もつられて笑った。
「奥さんも、女の子やって分かったとき、嬉しそうにしてはりました…もう四人目は考えておられませんの?」
なんの気なしに聞いた言葉に、滝本さんの顔が曇る。
「…家内は…亡うなりました…」
「え⁉︎」
「小春のお産が重かったからか、すっかり弱ってしもうて…寝たり起きたりが続きましてな。この前の冬、熱風邪拗らして。…なんや、人の最期っちゅうのは、あっけないもんですなぁ…」
遠い目で呟く。
「お気の毒なことでした…悪いこと聞いてしもて…」
「いいえ、先生のせいやなし、気にせんとって下さい」
滝本さんは取り繕うように笑って見せた。
その顔は、寂しかった。
助かりました、と礼を言うて、お代を聞いたら、大した仕事やないし、蝶番一つしか使うてないから代金なぞ要らん、と受け取ってくれず。
渡すの受け取れんのとしばらく押し問答した末、家に上げてお茶とお菓子を振る舞った。
「奥さんと赤ちゃん、お元気にしてはりますか?もぅ、娘さんも大きなったやろうねぇ。もうすぐ二歳でしょう。可愛い盛りやわ。」
「それは…三人目でまぁ、初めての女の子ですんで。上の子らにはお父ちゃんは小春には甘いと叱られますわ。」
はは、と頭を掻きながら笑うので、私もつられて笑った。
「奥さんも、女の子やって分かったとき、嬉しそうにしてはりました…もう四人目は考えておられませんの?」
なんの気なしに聞いた言葉に、滝本さんの顔が曇る。
「…家内は…亡うなりました…」
「え⁉︎」
「小春のお産が重かったからか、すっかり弱ってしもうて…寝たり起きたりが続きましてな。この前の冬、熱風邪拗らして。…なんや、人の最期っちゅうのは、あっけないもんですなぁ…」
遠い目で呟く。
「お気の毒なことでした…悪いこと聞いてしもて…」
「いいえ、先生のせいやなし、気にせんとって下さい」
滝本さんは取り繕うように笑って見せた。
その顔は、寂しかった。