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another storys
第27章 帆掛舟【潮騒】
「先生のとこのご主人は、息災にされとりますか?最近見かけんけど。」
「は? ご主人て誰のことです?」
「ちょっと前までよう見かけたんやけど、俺この辺仕事でよう通るから。背の高い、男前の。」
正一郎さんのことらしかった。
「あぁ、あれは私の主人やありません。うちの義理の弟ですわ。妹の旦那。田舎で床屋してましてなぁ。出稼ぎに神戸に来る言うんで、下宿させとったんです。もう帰りました。」
「そうやったんですか…」
「私も、主人を事故で亡くしました。それで、子供を育てるために手に職つけなと田舎から出てきて産婆になったんです。せやから、連れ合いを亡くした悲しみも、ちょっとは解りますよ。」
私は、仏壇にちらっと目をやった。
お墓は田舎にあるけど、お位牌だけは無理言うて、一郎がこっちに来るときに持たしてもろうた。朝晩線香とお茶をあげ、月命日にはお供えもする。
「…そう、やったんですか…」
「今、お子さんはどうしてはるん?」
「上の子がもう学校行っとるんで、なんなと世話してくれますわ。後は近所の人やら親戚やらに助けてもろうて、男やもめで何とかやっとります。」
その日はそこで話を終えたけど、それ以来、滝本さんはちょくちょくうちに来ては世間話をしたり、棚を吊ってくれたり、ちょっとした修繕をしてくれるようになった。
私もお礼におかずを持って帰ってもろうたり、持ちつ持たれつの関係が出来た。
「は? ご主人て誰のことです?」
「ちょっと前までよう見かけたんやけど、俺この辺仕事でよう通るから。背の高い、男前の。」
正一郎さんのことらしかった。
「あぁ、あれは私の主人やありません。うちの義理の弟ですわ。妹の旦那。田舎で床屋してましてなぁ。出稼ぎに神戸に来る言うんで、下宿させとったんです。もう帰りました。」
「そうやったんですか…」
「私も、主人を事故で亡くしました。それで、子供を育てるために手に職つけなと田舎から出てきて産婆になったんです。せやから、連れ合いを亡くした悲しみも、ちょっとは解りますよ。」
私は、仏壇にちらっと目をやった。
お墓は田舎にあるけど、お位牌だけは無理言うて、一郎がこっちに来るときに持たしてもろうた。朝晩線香とお茶をあげ、月命日にはお供えもする。
「…そう、やったんですか…」
「今、お子さんはどうしてはるん?」
「上の子がもう学校行っとるんで、なんなと世話してくれますわ。後は近所の人やら親戚やらに助けてもろうて、男やもめで何とかやっとります。」
その日はそこで話を終えたけど、それ以来、滝本さんはちょくちょくうちに来ては世間話をしたり、棚を吊ってくれたり、ちょっとした修繕をしてくれるようになった。
私もお礼におかずを持って帰ってもろうたり、持ちつ持たれつの関係が出来た。