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another storys
第27章 帆掛舟【潮騒】
「…お久しぶり…」
なんと言うたらええかわからず、それだけ呟いた。
善次郎さんは思いつめた顔で、玄関の上がり框に立ったままの私の腕をぐっと掴む。
「えぇっ⁉︎ 何いきなり! 離して‼︎」
慌てて逃げようとした私に、善次郎さんは眉間に皺を寄せたまま、唇を噛みしめる。
「…とうとう、来てしもた…」
善次郎さんは、片手に赤い紙を握り締めてた。
「赤…紙…」
善次郎さんは溜息を吐く。微かに、震えてるようやった…
「…二年間、諦めようとしたけど、あかんかった…はつ江さん。一遍だけ、思い出をくれんか…? 悔いを残したまま、行きとうないんや…」
潤んだ、熱い目で。
射るように見られる。
私は…逃げることもできず、目を閉じた。
なんと言うたらええかわからず、それだけ呟いた。
善次郎さんは思いつめた顔で、玄関の上がり框に立ったままの私の腕をぐっと掴む。
「えぇっ⁉︎ 何いきなり! 離して‼︎」
慌てて逃げようとした私に、善次郎さんは眉間に皺を寄せたまま、唇を噛みしめる。
「…とうとう、来てしもた…」
善次郎さんは、片手に赤い紙を握り締めてた。
「赤…紙…」
善次郎さんは溜息を吐く。微かに、震えてるようやった…
「…二年間、諦めようとしたけど、あかんかった…はつ江さん。一遍だけ、思い出をくれんか…? 悔いを残したまま、行きとうないんや…」
潤んだ、熱い目で。
射るように見られる。
私は…逃げることもできず、目を閉じた。