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another storys
第27章 帆掛舟【潮騒】
翌年には、召集対象がぐんと広げられ、大学を出たばかりの一郎も従軍することになった。
学生時代、ずっと野球をやっとった一郎は、肩が強いからと、手榴弾の投げ手に抜擢され、前線に行くことになる、と手紙が来た。
必ず。
必ず生きて帰ってくると、信じてたのに。
一郎は、帰って来んかった。
戦地からの訃報は、勇敢に戦って散る、というだけの、何一つ分からん電報で。
終戦後、復員した人たちの中で、自分の所属部隊の人たちがどんな状況下で死んでいったのかだけでも、家族に伝えてやりたいと、家を調べて手紙をくれた人があった。
前線で、手榴弾を投げるには、敵陣で丁度爆発するように、ピンを抜いてから、しばらく手に持っておかんとあかんらしく。それは、早すぎても、遅すぎてもダメらしい。
けど、一郎は、いつ爆発するか知れん手榴弾を持って待つことが出来ず、上官の号令よりも早くに投げてしまったらしい。それでも、敵陣の丁度手前くらいに落とせたら、拾いに行ってる間に爆発するのやけど、なまじ肩が強うて、敵陣の中まで届いてしもうたから、直ぐに投げ返されて、自分の投げた物を被弾した、という事やった…
どんな死に方やったらよかったなんてことはないけど、長く苦しまんで済んだのが、せめてもの救い。
そう、言い聞かせるしかなかった…
学生時代、ずっと野球をやっとった一郎は、肩が強いからと、手榴弾の投げ手に抜擢され、前線に行くことになる、と手紙が来た。
必ず。
必ず生きて帰ってくると、信じてたのに。
一郎は、帰って来んかった。
戦地からの訃報は、勇敢に戦って散る、というだけの、何一つ分からん電報で。
終戦後、復員した人たちの中で、自分の所属部隊の人たちがどんな状況下で死んでいったのかだけでも、家族に伝えてやりたいと、家を調べて手紙をくれた人があった。
前線で、手榴弾を投げるには、敵陣で丁度爆発するように、ピンを抜いてから、しばらく手に持っておかんとあかんらしく。それは、早すぎても、遅すぎてもダメらしい。
けど、一郎は、いつ爆発するか知れん手榴弾を持って待つことが出来ず、上官の号令よりも早くに投げてしまったらしい。それでも、敵陣の丁度手前くらいに落とせたら、拾いに行ってる間に爆発するのやけど、なまじ肩が強うて、敵陣の中まで届いてしもうたから、直ぐに投げ返されて、自分の投げた物を被弾した、という事やった…
どんな死に方やったらよかったなんてことはないけど、長く苦しまんで済んだのが、せめてもの救い。
そう、言い聞かせるしかなかった…