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another storys
第27章 帆掛舟【潮騒】
私は奥さんのお腹を撫でながら更に続ける。

「もしもし?聞いてはりますか?ちゃあんと元気な男の子にしてくれやなんだら、ご利益のない神様やて言うて回りますで?よろしいな?」

奥さんは困ったような顔でぱちぱちと瞬きをする。

「…先生…そんな神様を試すようなこと言うて…バチが当たりますで?」

「なんの。ご利益のない神様のバチなんぞいっこも怖いことあらしません。当てられるもんなら当ててみぃっちゅうんや。そのかわり、元気な男の子産ませてくれたら、精一杯お礼さしてもらいますし。なんならこれからお世話する妊婦さんにえらいご利益ある安産の神様でっせ、いうて宗旨替え勧めてもよろしいわ。
…と、まぁ、こんだけ言うたら神様かて自分の威信に関わりますからな。ええ仕事してくれはりますやろ。」

そう言うて奥さんのお腹をポンポンと叩く。
奥さんはプッと吹き出し、じきに声を出して笑い出した。

「嫌やわ、先生…先生みたいな人見たことありませんわ…」

ひとしきり笑うた奥さんは、もう思い詰めた顔はしてなかった。
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