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another storys
第27章 帆掛舟【潮騒】
赤ちゃんは、予定よりひと月も遅れてようやく生まれた。
さすがにお腹の中で余分にひと月居ると、よう育った、大きな赤ちゃんで。
逆子でも初産でもないのにそれ以上時間がかかって、なかなか出てこられへん。
お医者も呼んで、何かあったらすぐ病院に運べるように、その家の旦那の会社から車も一台手配して貰うて、お医者の先生と車を待たせた状態で、何とか取り上げた。
髪もしっかり生えた大きな赤ちゃんの、元気な産声を聞いて、その場の全員がやれやれと胸を撫で下ろし、
「男の子やで!」
と奥さんに告げた途端、奥さんは安心しきって気を失った。
その男の子は元気に育ち、無事に跡目を継いだらしい。
奥さんはようやっと肩の荷が下りたと安心したようで、その後もう一人の男の子にも恵まれる。
私は己の仕事をしただけや、というたけど、私にえらい恩義を感じてくれて、その後も珍しい食べ物が手に入ったやとか、旦那が仕事で外国に行ったら必ずお土産をお裾分けしてくれたりとか、何かと付き合いが続く。
結局、そうやって家に来るのに、車を出しとった上のお嬢さんと、家に下宿して専門学校に通っとった菊乃の息子が結婚したり、
そのお家との御縁は一生続いた。
さすがにお腹の中で余分にひと月居ると、よう育った、大きな赤ちゃんで。
逆子でも初産でもないのにそれ以上時間がかかって、なかなか出てこられへん。
お医者も呼んで、何かあったらすぐ病院に運べるように、その家の旦那の会社から車も一台手配して貰うて、お医者の先生と車を待たせた状態で、何とか取り上げた。
髪もしっかり生えた大きな赤ちゃんの、元気な産声を聞いて、その場の全員がやれやれと胸を撫で下ろし、
「男の子やで!」
と奥さんに告げた途端、奥さんは安心しきって気を失った。
その男の子は元気に育ち、無事に跡目を継いだらしい。
奥さんはようやっと肩の荷が下りたと安心したようで、その後もう一人の男の子にも恵まれる。
私は己の仕事をしただけや、というたけど、私にえらい恩義を感じてくれて、その後も珍しい食べ物が手に入ったやとか、旦那が仕事で外国に行ったら必ずお土産をお裾分けしてくれたりとか、何かと付き合いが続く。
結局、そうやって家に来るのに、車を出しとった上のお嬢さんと、家に下宿して専門学校に通っとった菊乃の息子が結婚したり、
そのお家との御縁は一生続いた。