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another storys
第30章 思い出の味【社内恋愛のススメ・Cross roads】
「うん、大丈夫よ。」

「あのさぁ、姉貴、昔お袋が作ってた林檎バターの作り方わかる?」

「林檎バター?作るの?」

「うん…林檎見たら久しぶりに食べたくなって。」

「もう久しく作ってないなぁ…懐かしいわね。お母さんに聞いてメールしたげるよ。」

「よろしく。」

姉貴との電話はそこで終わった。

遙が風呂から上がり、髪を拭きながらダイニングに入ってきた。

「あれ、電話?」

「うん、お袋に礼言おうと思って。」

「え!私も言いたかったのになんで1人で掛けちゃうのよ⁉︎」

「今お袋も風呂入ってるみたいで、姉貴が出たからまた明日掛けるよ。」

「…ならいいけど…」

俺が一人で電話を掛けようとしたことを、まるで抜け駆けしたとでも言いたげに遙は唇を尖らせて座った。

「林檎、食う?」

「うん!」

俺は箱から林檎を1個取り出し、果物ナイフで半割りにして剥いた。
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