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another storys
第30章 思い出の味【社内恋愛のススメ・Cross roads】

「樹さんのお母さんの思い出の味…?」
「そんなとこかな…昔、さ。働き出して1年目か、2年目だったかな…お袋がこうやって林檎送ってきてさ。」
「うん」
「独り暮らしの息子に林檎ひと箱。お袋は多分、世話になってる上司や先輩に配りゃあいいだろう、って思ったんだろうけどさ。その時俺東京でさ。独身寮で、会社から歩いて15分強くらいの物件だったんだよ。ひと箱背負ってくわけにもいかんしさ、何回も持ってくのもたるいじゃん。会社で配るったって皆ラッシュの電車に乗ってくんのに荷物になるしさ。結局、世話になってる先輩に何個か渡しただけで、自分でも食べ切れなくて殆どダメにしちまってさ。お袋に、余計なことすんな、迷惑だって言ったんだ…」
「……話だけ聞くと、そこまで言わなくても、って思うけど。ま、気持ちは解らなくもないかな。捌ききれないナマモノって貰っても困るもんね。」
「ごめん、ってお袋の寂しそうな声が、今でも忘れられないんだ…」
「そんなとこかな…昔、さ。働き出して1年目か、2年目だったかな…お袋がこうやって林檎送ってきてさ。」
「うん」
「独り暮らしの息子に林檎ひと箱。お袋は多分、世話になってる上司や先輩に配りゃあいいだろう、って思ったんだろうけどさ。その時俺東京でさ。独身寮で、会社から歩いて15分強くらいの物件だったんだよ。ひと箱背負ってくわけにもいかんしさ、何回も持ってくのもたるいじゃん。会社で配るったって皆ラッシュの電車に乗ってくんのに荷物になるしさ。結局、世話になってる先輩に何個か渡しただけで、自分でも食べ切れなくて殆どダメにしちまってさ。お袋に、余計なことすんな、迷惑だって言ったんだ…」
「……話だけ聞くと、そこまで言わなくても、って思うけど。ま、気持ちは解らなくもないかな。捌ききれないナマモノって貰っても困るもんね。」
「ごめん、ってお袋の寂しそうな声が、今でも忘れられないんだ…」

