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another storys
第30章 思い出の味【社内恋愛のススメ・Cross roads】
義隆さんも、きっと仕事でいっぱいいっぱいで、私の気持ちを思いやる余裕なんてなかったんだと思う。
でもそれは私や隆行を養う為だったと、今なら解る。きっと、申し訳ないと思いながら、食べられないモノだけを捨ててたんだろうということも。だけど、当時はお互いそんな気持ちの余裕がなくて、お互いに対するストレスを溜めてただけだった。

結局は、お互いを思いやる気持ちひとつなんだと、誠治さんと出会って初めて気づいた。

「いいわね。じゃああとは…鮭とキノコのホイル焼きでもする?」

「その組み合わせ。君が初めて俺に作ってくれた料理。…覚えてる?」

「そうだったかしら。」

「そうだよ。響子の入院以降、家庭料理なんて週一で実家で食べるくらいでさ。家庭料理の味に飢えてたから。すっごい美味しかったし、感動した。」

「美味しいって言ってくれたのは、覚えてるけど…私も、あぁ、ご飯を作ってだれかの笑顔が見られるって幸せなことだったんだなぁ、って感動したから…でも何作ったかなんて忘れちゃった。」
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