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第4章 化猫奇譚【陽炎】
その夜、猫は首に紐をつけて土間に繋ぐ。初めのうちこそ毛を逆立てていたが、それよりも己の傷が優先と見えて、始終尻尾の先をなめている。そこに夕餉に食べた魚の骨を置いてやったら、警戒しながらも食べた。

翌日、八尋と市八は猫を連れ、小石川の兵衛と鷺の元に赴いた。

「父ちゃん…どこ行くの?」

「父ちゃんの古い知り合いのとこだよ。お前も一度連れて行ったことがあるんだけど、まだ小さい時分だったから覚えがないかな。」

「猫、治してくれるの?」

「切れた尻尾は元には戻らないよ。でも、傷が今より悪くならない術を知っているかも知れない。」

小石川の高石養生所に着き、客として座敷に通されると、鷺と兵衛がいた。
お互い経た歳の分だけ老けてはいるが、印象はあまり変わらない。

ただ鷺は、流石に人の親になり、幾分落ち着いたように見えた。
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