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第4章 化猫奇譚【陽炎】
兵衛は猫の尻尾を一瞥し、溜息を吐いた。

「弱い獣に害を成して喜ぶとは、誠に碌でもないの。」

「尻尾の傷、治るかな?」

「それは問題なかろう。猫の尻尾が切れたり折れたりするのはままあることじゃて。尻尾の長いのと短いのとがおるのもそのせいよ。傷も舐めておるし、血も乾いて止まっておるしの。時節も秋じゃし、膿むこともあるまい。」

「そう…なら良いんだけど…」

鷺が市八に向かって。

「その悪餓鬼どもってのは、どんなヤツらなんだい?市八にどんな事をすんのか、何を言うのか、おいちゃんに教えてくれよ。」

鷺がニィッと笑い、市八はこくりと頷いて、過去の因縁を余さず語った。

話を聞き終え、鷺はしばらく何か考えていたが、手慰みかもう一本マタタビの枝を出して猫をじゃらす兵衛の方に顔を向ける。

猫がにゃあん、と鳴き、鷺は何か閃いた、という仕草をした。

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