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第4章 化猫奇譚【陽炎】
そして、今一度兎を捉え、血を竹筒に納め、竹筒ごと川の水で冷やす。日の当たるうちは暑くなることもあるから、中の血が傷まぬように冷やしておけと兵衛に言われていた。
残りの血を襦袢に散らす。陽に当てて乾かし、土をつけわざと汚す。

夕刻。
冬が迫る今時分の陽は、つるべ落としとはよく言ったもので、薄暗くなってからが早い。
アジトまで市八が案内し、サチは物陰に隠れる。八尋は言われた通り木の枝に陣取っていた。
サチはそこで薄汚れた白い襦袢を着、作り物の猫の耳をつけて、人の耳を髪で隠す。髪も少し乱した。

暗くなる前に、市八がアジトから三人をおびき出す。

お前らが尻尾を切った猫を、飼っていたが今朝から見当たらない。傷も大分酷かったし死んだかも知れぬ、一緒に探してくれないか、と泣きついた。
嘉助たちは鼻で笑ったが、市八をからかって遊ぼうと、手を貸すふりをしてついてきた。
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