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淫風の戦記
第4章 紫富の金
「先ほどの金塊にお付けします。この二つで桔耶殿をお譲り頂きたい」

人間を売買する。しかもその対象は自分。桔耶はそのことを恨まなかった。彼女自身は奴隷商をしたことはないが、両隣の店が奴隷商であっても何ら不思議ではない世界なのだ。

「ううむ。しかし、お主、我が邪魔をするとは良い度胸だな!」

今更凄む法眼である。

「申し訳ございません。しかし法眼様、もしも法眼様が桔耶殿に種を付けるようなことがあれば、この話はなかったことになりますよ」
「むっ…」
「私としては法眼様にとって非常に宜しい商談だと思いましたので、それが破談になってはお困りだろうと、止めさせて頂いたのです」

言い返す余地がない法眼は、配下に龍の彫像を運ばせ手に取る。

「それに法眼様、私は桔耶殿を自分の妾とするわけではありません。さるお方に献上しようと思っております」
「ほう」
「もしそれが叶いましたら、法眼様にとっても、茂里水軍にとっても、非常に強い味方が得られます」

龍の彫像が王家の印と同じもの…ということを考えれば、さるお方というのは紫富が仕える王家の人間と考えるのが自然である。

「(瑞鳥は富をもたらす…戊辰の読みに狂いはなかったな…)」

法眼の腹は決まった。

しかし、桔耶にはここにきて一抹の不安が生じていた。
紫富の妾になることを予想していた桔耶は、商人とともにあれば宇輪に戻ることが出来ると考えていた。しかし、自分は大陸王家に差し出されるという。となれば宇輪には戻れないし、香羅や枇杷を助けることが出来ない。とはいえ、法眼に囚われていては、いずれ宇輪水軍が罠と知っても助けに来るはずである。香羅ならばそうする…桔耶にとって最も避けるべき事態であった。
どちらにしても、こうなっては手も足も出ない。

売られる自分よりも、運命そのものを呪うしかない桔耶であった。

「(お任せあれ)」

突如、紫富の声が心の中に響いた。まるで自分の不安を見透かしたかのように。桔耶は紫富を静かに見つめる。彼は法眼と商談の詰めの話をしている。しかし確かに聞こえたのだ。

呪われた運命を終えるための大きな闘いが近づいて来ている。

漠然とした想像が彼女の心を満たした。
自分は時代を進めようとする強大な波に漂う一層の小舟でしかない。
紫富は、その大波の一つではないのか。

………………
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