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淫風の戦記
第4章 紫富の金
こうして桔耶は紫富の船に乗った。

そのことを戊辰が知ったのは翌日のことであった。

「愚か者めが!!」

彼の怒りは天を衝くばかりであった。しかし、立場は法眼が上であるし、自分の失敗によって香羅を捕らえられなかった引け目もある。

「(私の不在時にそのような者が来るとは…)」

偶然なのか、それとも計画なのか。紫富とは何者か。疑念が残る。
桔耶を囮に香羅や枇杷を捕らえる作戦も台無しである。

「(法眼は頼りにならん)」

それに幻覚薬をバラまく作戦も慎重に進めねばならない。宇輪か、他の水軍か。いずれにせよ大陸と交流がある者を敵に回すのは危険である。桔耶を早期に捕らえられたのは戊辰が作戦を遂行するにあたり極めて都合が良かった。それなのに法眼が桔耶を逃した上、新たに大陸の者と思われる紫富が現れた。

「(急いては事を仕損じる)」

幻覚薬を流布する速度を含め、宇輪水軍との決戦、情報網の見直しと、戊辰は大幅な戦略修正に追われることとなった。

………………

二日後、茂里水軍との決戦の準備を進める香羅に一通の書状が届いた。差出人は紫富である。

『桔耶殿を峰島より救出した。時間はかかるが必ずそちらにお返しする。商人紫富』

香羅に封書を届けたのは宇輪水軍の者だった。香羅に渡してほしいと、見知らぬ男が持参し、すぐに立ち去ったという。

心配ではあるが、今はこの書状を信じるしかない。そして斗真国の戊辰の野望を挫くために可能な限り対策を打つ。そう決意する香羅と枇杷であった。
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