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淫徳のスゝメ
第3章 私が最も華やいだ頃のこと
* * * * * * *
郊外に所在している全寮制の女子校に、先月末、私は入寮した。
高校一年生の私達は、新入生だ。だが、同級生らは皆、中等部から共同生活を送っている。
私は朝晩、顔を合わせては家族以上に盛り上がる彼女達の結束を外れて、入学式、始業式と、淡々とスケジュールに従っていた。
転入時、お父様が寄付金を納めることはなかった。知らない土地で、私も仏野財閥の娘であることを公言する理由がなかった。
規則だの学業だのの桎梏にいる少女らにとって、私のように口数少ない新入りは、日々の鬱積を晴らすに好適だ。入学式で、彼女らはまず陰口で小手調べした。始業式で私の足を引っかけて、私を飛ばして配布物を回し、寮の上履きにボンドを塗って、徐々に程度を高めていった。
そして、今日から授業だ。
昼休み、私は特に中心になって陰険な仕打ちを働いているグループの呼び出しを受けた。
「どういった用件でしょうか」
「どういった用件でしょうか、だってー!お嬢様面ってやつぅ?」
「やばいよ、この子。黙り込んで日本語喋れないみたくしてるくせに、口開くと気取ってやがんの」
「どういった用件でしょうか、……いひひひひっっ」
がらんどうな屋上に、私達の他に生徒や教員の姿はなかった。
「仏野さんって、◯◯女学院中学校から来たんでしょ」
「はい」
「あんなブルジョア揃いの完全エスカレート校から、わざわざ外部進学。何したの」
「わざわざ出てくるって、よほど可哀想な学力だったか、問題起こしたかに決まってるよねぇ」
五人のクラスメイト達が、私にまつわる推測を立てる。援助交際だとか、万引き常習犯だとか、進学基準に達する顔ではなかったのだとか、彼女らは私に卑下た笑いを浴びせながら、私自身を見つめていない。