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淫徳のスゝメ
第4章 私が天涯孤独になったこと
* * * * * * *
「きよらを見に行ったのか?」
濡れた夜陰の音を縫ったお父様のささめきは、外は雨だと口舌にでもしたような調子だった。
私はお父様のごつごつした太ももに女の肉壺をすりつけながら、あるじに懐くペットよろしく、厚い上体にまといついていた。
「ええ、あまりに想像通りで吃驚したくらいだったわ。無知蒙昧で陰気で強情、同級生達も先生も、きよらには手を焼いていて、皆、あの子にはうんと体罰をしてくれているそうよ。私とまづるも教育を手伝ってきたわ。今後もきよらの教育を続けていただけるよう頼んでおいたし……」
「はは、姫猫は頼もしいな。あいつは奥さんの悪影響を受けて、口だけは達者ぶっている白痴だ。きよらについては、お父様もつい匙を投げてしまった……それを姫猫が気にかけてくれて良かったよ。あいつは、なんだかんだで可愛い娘だ。偏見という目隠しをさせたまま、世に送り出すわけにはいかない。詭弁家どもは、同じ趣味を持つ人間には手厚く対応しているように見えて、腹の底はすこぶる冷酷だ。きよらにもいつか皺寄せがくる。帰ってくる頃、女らしく成長していれば、あいつにも少しは父親らしいことをしてやりたい……」
「そう。お父様は、まだきよらを見捨ててはおいでになってなかったのね」
「安心なさい。きよらが正しい道に戻ったところで、あれに与える分の愛情を、お父様は姫猫から削いだりしない」
「ん……はぁっ、ええ……」
「ぐっ……はぁっ、はぁ……」
お父様の太ももは、いつの間にやら水浸しになっていた。お父様の右手が手持ち無沙汰のように私の乳房を揉みしだき、私もお父様のペニスを握る。
蓮美先生に再会して、二週間が経っていた。
それから今日までの間、こうした夜陰の中にいると、私の目蓋の裏側には、必ずと言って良いほどあの怜悧な影が浮かんだ。
さしずめ生きた亡霊だをここにいるはずのないあの人が、私の肉体にじかにまといつき、痺れるような官能の嵐を巻き起こしてゆく。