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淫徳のスゝメ
第4章 私が天涯孤独になったこと
「警視庁のベテランを舐めてもらっては困るわ」
案の定、有本さんは、まづるの話を一笑に付した。
「姫猫。貴女にこんなに親身なご友人がいらして、私は心が温まったわ。まづるさんは貴女を肉親のエゴイズムから引き剥がして下さったほど、貴女に熱心なのね。そこで私は一つの疑いを持ったわ。見たところ、聖司さんにはただの怪我。一ヶ月もあれば社会復帰出来るでしょう。そこでまづるさん?優しい貴女は姫猫を寂しがらせないように、彼の罪を貴女が被ろうとしたのではなくて?」
「と、申しますと?」
「まりあさんを追いつめたのは仏野聖司、私は彼だと憶測している」
有本さんは、脚本でも仕上げてゆく迅速さで、仏野家を襲った悲劇を組み直した。
それからお父様の逮捕状を手配して、警官達を呼び寄せた。
「怖かったわね……姫猫。それに遊くん、まづるさんに久美子さん。姫猫を助けようとして、貴女までこの恐ろしい男の餌食になりかけて。久美子さんも、今日は帰ってゆっくりお休みなさい。貴女は聖司容疑者に脅されて、刺青を入れたの。この男はサディズムもマゾヒズムも楽しみたい変態ですからね。それから姫猫、この件についてマスコミが訪ねてきたら、私に連絡させなさい。仏野の名前を愚民達の好奇心の餌食にするようなことはしないから」
かくて私は、四年に渡ったお父様の支配を解放された。
有本さんはお父様に言いつけて、お兄様に仏野の権利、財産の一切を相続させると、彼を連れて職場へ向かった。