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淫徳のスゝメ
第5章 私の暗黒時代のこと
律子は、私の膣壁を四本の指で満たしてこすりながら、クリトリスを刺戟した。収斂する私の中で、律子の片手も開閉する。四本の指は上下に動いて撹拌し、私が絶頂に至りかけると、その愛撫は陰湿にたゆむ。律子の唇が私の乳首を飲んでいた。舌先で転がす優しい愛撫は、まるで絵画を鑑定している具合の眼光がなければ、物足りなさもあったろう。
私は律子に狼藉をせがむ。
はしたなく、とてつもなく淫らな単語を駆使しなければ、律子は私に天の門を開かせない。
「姫猫。カリスはね、女の激情を風景画に投影している画家なの。喜怒哀楽に、恍惚、快楽、絶頂、悋気、絶望……。彼女の描く世界には、現実において可視の草花が存在しないし、あらゆる物質、生き物も、私達からすれば奇怪なかたちをしているわ。そう、感情でさえ主体によって異なるのだから、激情となればもっと違う。私が与える快楽と、姫猫が私に与えるそれでも、二人で同時に味わったって異なるものね……」
「あああああっっ…………」
電流が私を臨死させた。
あれだけ焦れったがった肉体は、最後はスイッチが押されたように、律子の爪先がクリトリスに触れただけで糸が弾け飛んだのだ。
蓮美先生の強引な蹂躙に、まづるの献身的な呼び水──…そして律子の、お父様を彷彿とする支配。
私は、律子にお父様を重ねていた。
幼い時分、お父様の話を聞くのが好きだった。お父様の哲学は、私の肉体を内側からほぐしていって、最後には生物学的に攻撃する。決してこまやかな愛撫はなかった。ぞんざいなものでもなかった。そう、呼び水そのものはとりわけ印象にも残らなかったお父様は、私にあるもの、同時に私にないものを、極端に備え持っていた。