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淫徳のスゝメ
第5章 私の暗黒時代のこと
「姫猫さん。貴女のお金の出どころを、私達ずっとお訊きしなかったけれど、律子が貴女の貯金に頼るようになってはいけないわ。私はあの子の強情を反対するつもり、裁判だなんて、これ以上世間の笑い者になりたくないの。律子は小さい頃から夢見がちでね、女性を好きになったのだって、あの子の偏った絵画好きがこじれたからだと思っているの。ええ、姫猫さんだって大丈夫よ。貴女達は若い、若い時分は、何にだって興味を持つものよ。姫猫さんなら立派な男の人に貰ってもらえるわ。律子と結婚していたこと?黙っていれば分からないわよ、友達同士が同じ家に住んでいたのと同じこと」
律子と別れろ。
暗に強要したお義母様の言い分は、にわかに私に不安を招いた。
この村には、もしや極悪の異端宗教教祖がいて、住人達を洗脳でもしているのではないか。あるいは、恐竜が出てもおかしくないのではないか。
亡きお母様の蒙昧ぶりも凄まじかったが、ここまでくれば、私は呆れるのを超えて同情さえする。
律子とは、遅かれ早かれ引き離される。
そしてこのお義母様の思想を植えつけられたばかりに、ああも可哀想な精神が固まってしまったのだと思うと、もう私は穏やかな気持ちで律子に接するより他になくなってしまったのである。