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淫徳のスゝメ
第5章 私の暗黒時代のこと
このところ、驚くほどに夕餉の時間が早く終わる。
窓の外が明るい内に、私は寝室に切り上げて、丸井に肌を手入れさせながら、姉妹で律子を慰めていた。
「……姫猫。貴女に迷惑かけたわね。私、裁判で必ず勝つわ。私は何を言われても良い、でも、貴女まで中傷されるとなると、これは裁判でも私の言い分になる」
「今朝の記事?私は面白かったから、構わないわ」
律子が告訴されて二週間、詭弁家達の誹謗中傷は、私にまで及ぶようになっていた。
極めて有害なポルノ絵画を好んでいる学芸員は、彼女自身もレズビアンで、無職のパートナーを養っている。…………
「それに、あの記事には大きな誤りがあった。貴女は芸術と現実を混合しているように書いてあったけれど実際の貴女はつまらなくて、私が少し試してみたいと言っても、ロープだって使ってくれない。異性同士で交配しているあの人達の方が、彼らの言葉を借りたなら、よほど有害な遊戯をしているでしょう」
私の律子への憎しみは、悪辣な記事の数々によって鎮静していた。まづるを欲する私の虚無感。律子の独善的な愛とやらは、私に空疎を自覚させたが、そこに悪意はまるでなかった。
律子も所詮は被害者なのだ。人間という、理性の欠片もない多数派同調バイヤスの家畜に同族意識を向けられて、その期待にそぐわないと判断されたが最後、蟻のような攻撃の干渉を受ける。
それに、私と律子の関係は、終わりに向かいつつあった。永遠に続くことも覚悟の上だったこの地獄、独占され、独占させられる責め苦は、私の破格の選民引力が弾き飛ばしたのかも知れない。