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淫徳のスゝメ
第5章 私の暗黒時代のこと



 律子の指が、まもなく私を突き上げた。

 私は情欲に飲まれてたわみ、喘ぎ、純朴な肉叢の覆った背中に抱きついた。

 律子の指はさんざっぱら私から花蜜を引きずり出すと、今度は舌が私を求めた。


「ああっ……あんっ!」


 私の手は、律子の尾てい骨から背骨へ、うなじへ滑る。不可抗力が私を狂わせ、私は律子の頭を抱えた。

 庶民のくせに私と同じ、長い黒髪──…堅苦しいスーツをまとう昼間はしかつめらしく結ってあるのに、今は私と全く同じに流してある。


 ちゃぷっ、ぴちゃっ、ぴちゃ…………


 薄い唇が、私の性器を吸っていた。博学な舌が、私の浅瀬を舐めずっていた。

 芸術を愛でる律子が憎い。その分、快楽を疎かにする律子の窪みは、ただ舐めるというだけで、私の浅瀬に波を招く。


「あんっ!ああんっ、ああっ、あああっっ…………」



 私は、律子の頭をひときわ強く抱き締めた。

 クリトリスから電流が上る。電流は、私の身体をいっそう激しく揺さぶった。


 私は律子に爪を立てた。



 そして、針を立てた。



「っっ…………」







 それから律子が衰弱するまで、たった数秒間だった。

 随分と長い一瞬だった。
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