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淫徳のスゝメ
第6章 私が見た海の向こうの嘲笑のこと
「諸君、遊のことは知っているね?こちらは妹の姫猫さん、一昨日お呼ばれした結婚式の主役の一人だ。彼女を含めそちらのお二方も、彼の配偶者だ」
一同はまず私達お兄様の身内を歓迎し、それから愛人、最後に丸井、神父と声をかけ合った。
「ロベルト、そいつは本物の神父か?だとすればヤバいぞ。オレたちの目的は保守派の討伐、石頭の代表格をこんなところに招き入れたら、結社の今後に関わるだろう」
「青年よ」
ロベルトに非難を向けた青年を、神父が慈愛溢れる口調で制した。
「我々は偏見する生き物だ。主が我々に偏見を与えた通り、正確には、君達人間が我々に偏見を与える主を創造した通り、我々は時として他人を表層だけで判断するところがある。そこでだ、私は神の存在の真偽はさておき、今では偏見を憎んでいる。昨日も哀れな愚民が教会を訪ねた……。その男はパートナーに隠れてよその女と肉体関係を結んでいる、やめたくてもやめられない、それで懺悔しに来たと話すのだ。私は男を叱ったよ。何故、姦通を隠す必要があるのかと。パートナーも愛人も、共に支配すれば良い。恥じらいこそ悪徳なのだ。それでパートナーが男を罵ったなら、彼女を私のところへ連れてくるよう彼に言った。私が彼女を折檻して、姦通の正当性を教えてやるとも約束した」
神父の演説が終わると、一同から息を飲んだ気配がした。
ある青年は枷でも外れたように晴れやかな紅潮を顔に浮かべて、ある女は優れた音楽に啓蒙でもされたように感じ入った様子を見せ、またある男は時折息をつきながら、手帳にペンを走らせている。