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淫徳のスゝメ
第9章 *最終章*私が淫蕩に耽った末のこと
「……、姫猫……」
私はポシェットからリングを取って、キスの名残にそれを嵌めた。まづると揃いのプラチナのリング。
「本当にお兄様とは別れるわ」
「嘘だったの、……」
「稜とは結婚していない。それは、本当」
「──……」
「離婚届も出していない、私達こそ、今すぐ一緒になるべきだわ」
私達は、来客用の寝台に転がり込んだ。
とかしたばかりの黒髪が、まづるの手櫛にかかって乱れる。袖を通したばかりのロリィタ服もどきが、彼女に除かれてゆく。
私はまづるにキスをして、抱擁して、呼び水を請う。まづるも私にキスをして、愛撫して、ドラマを気取ったような台詞をささめく。
あまねくまことだけが、私達を濡らしていった。
私の想いも、時間も、天命も、けだし彼女のために残してあった。私という貴い女が彼女のために削れるのであれば、それは私のための消費だ。
見返りなど計算したことはない。神も信じず、人間さえも見限っていた。
だのに私は幸福だ。
幸福など存在しない晦冥で、まづるは、確かに幸福の似合う光を私にもたらした。
愛さなかったのに、愛されている。思い遣ったことなどないのに、思い遣られている。
何も期待しないで、何も信じなかった私の官能は、歪みもとろかす愛に満たされてゆく。
私もまづるも、けだしこの先も多情に官能を賞翫してゆく。
私はお兄様や稜を玩具にするし、まづるは三井田さん達を娯楽にする。
それがまづるの気に入った私で、私の好んだまづるだ。
それでも二人、愛し抜ける。
最終章 私が淫蕩に耽った末のこと──完──