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淫徳のスゝメ
第2章 私が享楽的親友に出逢うまでのこと
* * * * * * *
私の高校生活は、充足していた。
生来、物覚えの良かった私はたまに授業に顔を出しては、適当に期末考査の準備を整えていた。
中より上の家庭の子女が大半を占めるこの学院は、彼女らの保護者達の寄付金で潤沢しているところがある。
仏野の家も例外なく、むしろ飛び抜けていた。
私は時たま教師に個別授業を開かせて、試験問題の一部を買い取り、高校三年生の秋には大学部への内部進学も決定していた。
年末特有の雰囲気が、街を覆った。
その日、私は朝からメイド達と歓談していた。
呑気なひとときが断たれたのは、お母様の急な来室だ。
このところ、お母様はきよらに付きっきりだった。長女がいたことなど忘れていたようだった。きよらがクラスメイトらの横暴に遭いながら、生来の内気を発揮して、それについてをお母様の求める通りに打ち明けなかった所以もあった。
「話って何。お母様」
お母様は私をリビングに呼び出すや、メイドを全員退室させた。
ボタニカル柄の薄手の茶器から、柘榴の匂いが昇っていた。
幼い頃、私が好んでいた紅茶だ。
子供は九つまで、保護者の手間暇を離れるべきではない。そうした理屈で、メイドに一切手を出させないで、お母様がよく淹れてくれていたお茶だ。
幼かった頃と同じフレーバーの水面に、私は息を吹きかけた。