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淫徳のスゝメ
第3章 私が最も華やいだ頃のこと
「ええ。私が小さかった頃、おばあちゃんに買ってもらったドレスがあります。ピアノの発表会でした。もちろん今では着られませんけれど、あれだけ気に入ったドレスは初めてです」
「では、何故そのドレスを気に入ったか考えてみましょう。美しい洋服は身を飾るだけではない、確かに着心地が良いものなの。なかんずく私は、レースやリボンの少しついた、シフォンで出来たものが好きだわ。洋服なんて、やかましい法律を満足させられるだけの処置がとれれば何だって同じと思うでしょうけど、着心地の違いは侮れないわ。そう、重々しいスウェットや、ひやりと堅い化学繊維のシャツなんかは、やはり私はいただけない。そうした質感を好んでいる人達もいるし、それはその人達にとって好ましい洋服ということになるわ。つまり、個人の知覚こそ良し悪しを測る目方なの。セックスに男女が揃う必要はないし、女性器にペニスを当て嵌める必要も全くないわ。仮に性交の目的が本当に繁殖だったなら、私達に快楽で相殺しなければいけない痛みは伴わなかったでしょうし、そもそも私達は卵や花粉で繁殖していたことよ」
「そんな利己的な感性を、神様はお怒りにならないでしょうか。それに、テレビでも浮気はいけないことと言われています。まづる様はお慕いしておりますけれど、私、お母さんがまづる様と恋人のようなことをなさっているのを、お父さんが知ったらと思うと……」