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《愛撫の先に…》
第5章 《リラックスセラピー》
菜々美が指定しない為に結城が18・20の階を押すと上昇し始める。

『お仕事の途中じゃ?』
『フロントですか?
俺の業務はもう終わっていますよ、
君を待つ為に夜間業務に入った彼と一緒にいた』

『あたしを待つ為?』

『今日は遅くなると君の伝言を17時過ぎにスタッフが受けた電話を聞いてね』

結城は彼女の為に夕食を用意するかディナーに出かけると予測出来た。

そんな配慮に対しての彼女なりの彼への誠意からの電話。

『携帯出してください』
『携帯?』
『スイートタイムにかけるなら俺の携帯でも構わないはず』

それもそうだと彼女は携帯を出すと、
赤外線機能ですぐさま2人のメアドは交換された。

18階〈開〉を押したまま結城は廊下に出た菜々美に問いかける。
『君の眠る場所は?』
『あっ…』
今日1日上の空だった事…
『あの1人で寝ます』
『そうですか――、
じゃあまた明日』

ドアが閉まりかける。

『待って!』
理性とは違う安らぎと安心感を求めるが為の彼女の無意識に発した言葉に、
彼女自身も戸惑っている様子だ。

『結城さん!待ってください!』
あたしってば何を引き留めちゃってるの?

ドアは2センチのところギリギリで閉まる事なく彼により〈開〉にされた。

『気が変わりましたか?』

『―――はい』
あたしってば何を?

『ベッドの端にお邪魔させてください』
あたしってば何を?

結城はおかしそうに笑った。
『端によると落ちてしまいますよ、
お風呂を済ませたら待っていますよ』

ドアが閉まるまで彼の笑う声が聞こえた。
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