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《愛撫の先に…》
第6章 《ぬくもり…》
***

2日後、夕方。
菜々美は会社帰りに陽子の車で約束された和食処へ向かっていた。
『おかしくない?』
『大丈夫よ、行ってらっしゃい』
膝までのタイトスカートに白いブラウスに上着、
髪は失礼のないようシニヨンにしている。
『1人じゃ心細いなぁ…』『何度も中谷専務と顔を合わせてるでしょ』
『ん…』

待ち合わせ19時よりも早く着いたが、
陽子は澤井とデートらしく帰りはタクシーになりそうだ。

今にも降りそうな雲行きに菜々美は溜め息をつき和食処駐車場から店内へと歩き出す。


……
中谷は早く来ていて菜々美は慌てたがオーダーを待ってもらっていた。

釜飯・焼き魚・刺身に天ぷら・味噌汁・漬物だったが菜々美は緊張から味わう事すらままならない。
向かい合っての食事なら尚更だろう。

『元気そうで何よりです』
『あの中谷専務…どういう意味でしょう』

『私はたまたまあの交差点で信号待ちをして、
江崎さんあなたによく似た女性を見かけたんです』

『あの交差点?』

『その女性は男達4人に囲まれていて…窓を開け確かめようとする前に、
はっきりと江崎さんの声を聞いたんです』

あたしが襲われた夜の事―――――!?

『残念ながら私は急いでいて信号が変わった為に呼び止める事も出来ずに…
車のアクセルを踏んだ』

『あの…』

『結城くんを呼び出したんだがスイートタイムからだと20分は要する。
聞こえてきた会話からあなたが危ない目に遇っていなかっただろうかと気がかりで―――』

どうして結城さんが来てくれたの?――と不思議に思っていたわ…

中谷専務が呼んで…
涙が出そう…
泣いちゃいそう…
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