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《愛撫の先に…》
第6章 《ぬくもり…》
『彼がまだ10代の頃、
ある事がきっかけで始めた予言だったが』

『中谷専務は結城さんと長いつき合いなんですね』

中谷はカバンからミニアルバムを手にするとパラパラとめくり、
1枚の写真を菜々美に見せていた。

ショートカットの黒髪でメガネをかけた男子が中谷に似た温厚で優しそうな顔だち、
中谷の隣は腰まである黒髪の女子がいて2人の腕に手をかけ、
女子の隣はショートカットから少しのびた黒髪の結城が笑っている。

『彼らの高校生の頃だよ、
なかなか帰省しない息子と孫の顔を見たくなった時に眺めていてね』

『黒髪…』
『高校を卒業して間もなく結城くんは金髪にして周りを驚かせたもんだよ』

まだ10代だった結城さんがここに…
この女子は誰?
結城さんの恋人?

恋人?

中谷専務の息子さんの恋人?

結城さんの恋人?

チクン‥
菜々美の胸がざわついた。

『結城くんにとって予言は意味のあるものなんだよ、
大嫌いだと言うとナイーブな彼は傷ついてしまうからどうかお手柔らかに』

その時携帯が鳴り話始める中谷は伝票を手にした。
『緊急の用事が出来てしまって江崎さんを送っていけそうにない』

『あたしはタクシーで帰るつもりでいますから』

中谷が精算を済ませた為に菜々美は駐車場でまたお礼を言った。

歩き始めてすぐに雨粒が落ち始め中谷は車から降りて傘を菜々美に差し出した。
『私は車だから傘を持っていきなさい』
『でも…』
『傘は雨をしのぐ為にある、早く』
『ありがとうございます』
菜々美は蒼い傘を大事に持ち歩き始めた。
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