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《愛撫の先に…》
第6章 《ぬくもり…》
交通量の多い通りは道路両側に点在する街灯やさまざまな商業施設・飲食店の灯りやネオンで程よい明るさだった。

菜々美をかばうように覆いかぶさっている結城の為、彼女の視界は雨に濡れたアスファルトと微かな顔の輪郭のみ。

人肌に触れられている背中は温かいのに地面についてる部分は冷たくて。

『あんな場面で飛び出していくなんて…』
『…やっぱり結城さん――』

なんで?
なんでこんなところに?
こんなところ?…
歩きまわってここが何処だかわからない…

『大丈夫かー?』
『警察?いや救急車?』
そんな周りからの声にハッとして菜々美は結城を気づかう。

『結城さん怪我してますよね?』
『大丈夫―当たってはいるが押された程度の衝撃だからたいしたことはない』

片側2車線は菜々美の行為により車は停まり、
傘を落とした反対側車線は車が往き来し無惨にも傘はバキバキと音をたて幾つにも折れていく。

『大丈夫か?』
先ほど怒鳴った運転手が2人に声をかける。

結城がよろけながら立ち、菜々美に手を貸して申し訳なさそうに頭をさげた。

周りの人々や運転手は安堵し2人が車道から移動したのを合図かのように、
人々も車も動き出した。

『是非とも教えてもらいたいね、なんであんな危険な事を?』

『中谷専務からの傘を取りに…』

歩行者信号が青になり菜々美は傘を取りに歩き出し、幾つにも折れた無惨な状態に涙する。

『着ていなさい、風邪をひく』
結城は上着を脱ぎ彼女の肩にかけてやった。

うつ伏せだった彼女のブラウスやスカートは濡れた地面により、
肌に張り付いている事を結城は言葉にはせずに態度で示したのだ。

風邪をひく?
きゃっ
下着が透けて見えちゃって…

結城さん気がついて?

菜々美の胸は高鳴った――
紳士的なの?
これが結城さんの優しさ?
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