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《愛撫の先に…》
第7章 《感情のおもむくままに…》
赤信号が焦れったく感じる程に反対側にいる結城に、菜々美は溜め息をつき何気なく顔をあげた。

その視界にはビルの掃除をしている作業員が脚立に乗り高い窓を拭いている。

あんな高い所に上っての掃除怖くない?
脚立側にあるのはバケツ?
菜々美がそんな事を思っていると信号が青になり彼女は横断歩道を渡り始めた時、
何かがぶつかる音と同時に開いた窓から清掃のバケツが落下し始めた。

バケツ!?

結城さん!
女の人と立ち話をしていないで早く逃げて!

『結城さん!』
街中の人々の話し声や車の音で聞こえていないの?
間に合わないわ!

バケツって汚れた水に違いない!
あたしは結城さんの金髪も好き…
だからバケツの水を浴びた汚れた金髪の結城さんは見たくないの!

お願い!
間に合って!

トンッ―――!
菜々美は両手をのばし力いっぱい結城のウエストを押した。

まるでスローモーションのよう。

結城は1メートルよろけ、女は後ろに下がり。
菜々美は結城を押した弾みでアスファルト地面へ大の字にダイブするかのよう、バケツの水が落ち彼女の背中を濡らしてく。

『いったい何が…あの大丈夫ですか?』
結城が膝まずくと同時に、菜々美はゆっくりと顔をあげ濡れていない金髪に安堵した。

『君は、菜々美さん!』

『良かった…
金髪に水落ちなくて…』

『水?』

菜々美に言われ結城は側に落ちているバケツと化学繊維の雑巾を拾い上げた。

『すみませ〜ん!
お怪我ないですか〜?』
ビルの窓から清掃作業員が呼びかけ、
菜々美はうなずき結城は菜々美を見て作業員の方を向いた。
『なんだってバケツなんかが落ちてくるんです!』

『結城さん良いの…』
菜々美はゆっくりと立ち上がろうと地面へ手をついた。
あなたの金髪が汚れないで良かった…――!

作業員が息を切らしながら降りてきて菜々美・結城へと謝っていた。

『クリーニング代を』
『走らなければあたしにはかからなかった、
だからクリーニング代は受けとれません』

『だけど…』

人だかりが出来始め菜々美は首を振った。
騒ぎにはしたくないの…

『あたし帰ります』
結城さんのデートを邪魔したくないし…
ツーショットなんて見たくないし…

菜々美が立ち上がらない内にフワリと体が浮いた。

結城さんにあたし抱き上げられている!!?
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