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《愛撫の先に…》
第5章 《リラックスセラピー》
契約者はあたし!?
どういう事…?

菜々美は彼に腕を掴まれ精一杯の力で手を振りほどいて逃げた。

『来ないでっ…帰って!』エレベーターの〈開〉を押す指先が震え、
結城が乗り込む前に〈閉〉を押し3階へ上昇させた。

だがバッグ等は結城が持っている為に部屋の鍵もなく彼女はドアに寄りかかる。
『スペアキーは部屋の中…』

ずっと陽子がいてくれた…
だけど今日からまた1人…
1人きりの部屋で1人で眠る…

あの恐怖を思い出さないとは言えない…
今までは陽子がいてくれた…
陽子にすり寄って眠った…
あの日、
男達に掴まれた手は振りほどく事も出来ないほどの力で掴まれていた。
手を掴まれる事への恐怖心…――。

『君は3階を押していた、
これでは追ってきた男達に君の部屋を探して下さいと言っているのと同じだ。
相手が俺である事を感謝してもらいたいね』

途方に暮れる彼女の側に結城は近づきバッグを差し出す。
『君が嫌がる事はしない、見ていてあげるから鍵を開けて入るんだ』

『結城さん…』
どうして?
あの男達と同じなら今力づくで襲うタイミングでしょう?

菜々美は鍵を開け電気をつけてバッグを置いた。
静まりかえった部屋――。淋しくてテレビをつけるが所詮テレビ、
身近な人の会話や温かみなどは感じられずBGMでしかない。

淋しい…

気をまぎらす為に菜々美はバスルームのドアを開けるが余計に淋しさが増す。

『結城さん…結城さん…
あなたでもいい、
側に居て―――』

玄関のドアを勢いよく開ける。



『結城さん…』

『寂しくなったんですか?』
外を見ていた結城が振り返り苦笑した。

菜々美の心にあたたかい感情が駆け抜けた――。
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