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《愛撫の先に…》
第5章 《リラックスセラピー》
『怖くなんて…』

結城が彼女のキャリーバッグに手を伸ばすと、
菜々美は身を守るかのように更に離れる。

そんな彼女を見ると受けた屈辱と恐怖がどんなものかと顔をしかめる結城。
『俺は君の処女を奪った…君は嫌だ嫌だと訴えていたのに…こんな風に反応される原因の1人は俺なのか…すまない…』


乱暴したのは結城ではないのに彼の謝罪に、
菜々美は戸惑いがあり返す言葉がみつからない。

乱暴したのは結城さんじゃないわ…


18階、1801。
結城は室内の説明・避難経路等を彼女に伝えた。

『何かあれば内線でフロントにかけるといい、
俺は最上階に居る。
暇をもて余すなら19階は鍵はかけてはいないから利用してくれて構わない』
結城はエアコンを入れた。

『君がバスルームから出る頃には快適な室内温度になっているはずです』
彼が部屋から出ていく後ろ姿を菜々美は見ていた。

床は黒い絨毯・窓は1ヵ所で赤いカーテン。
小さなテーブル・壁・ベッドは白で統一されている。液晶テレビ・冷蔵庫・湯沸かしポット・マグカップ等々。

菜々美はキャリーバッグから着替えを出しバスルームのドアを開けた。

男達がつけた身体中へのキスマークはすでに消えていたが、
忌まわしい記憶がよみがえり消し去るかのように彼女は乱暴に身体中を洗った。
『嫌ぁ〜、陽子っ』

何処にいようと1人なら同じなのよ…
触れてほしくない男達から受けた心の傷は消えない…

髪を乾かすと寝る事にしたが忌まわしい記憶が邪魔をし、
何度も寝返りをうつ。

『陽子…話し中みたい…』
電話を諦め溜め息をつく。
オートロックの為に鍵だけを持ち19階に向かった。

菜々美はソファーに座り雑誌をめくったが、
癒してくれる陽子がいない為に眠れないのだ。


……
………
菜々美は明け方やっと眠りについたが、
肩に肌のぬくもりが感じられ目をあける。

人肌は結城でえらくびっくりした顔をしていた。
『一晩中ここに?』
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