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《愛撫の先に…》
第5章 《リラックスセラピー》
眠そうな菜々美は結城を見て自分の身なりを隠そうとしたが、
体にかける毛布等持ってきているはずもない。

『黒生地に白のドット柄…両手で隠しても遅いですよ…しっかり寝顔も見ていますから』
結城は目を細めた。

『バスローブ着ないんですね、脱衣室にMサイズを色とりどり揃えてあるというのに』

『バスローブって寝てるとはだけちゃうから』

『ふふっ…君はよほど寝返りをうつらしい』
結城は菜々美の胸あたりに視線をはわせ口角をあげ、壁の時計を見た。

『朝食を運んできたら部屋からは返事はなく…探しました』

『朝食?今…7:30!?
携帯のアラーム止めて寝ちゃってた?
食べてる時間なんてない…支度して…――
遅刻しちゃう』

『送っていきますから朝食くらい食べなさい』

結城はじろりと菜々美を見て息をはいた。
『眠そうな顔で朝食抜きだと体力なんて持ちませんよ?』

1801部屋のテーブルにはトレーにのった朝食が置かれる。

ロールパンにはチーズ・薄切り生ハム・レタスが挟まれ、
トーストされた食パンにはマーガリンがぬられていた。
小さなボールには野菜サラダ。
ヨーグルトに牛乳。

『俺の朝食メニューを押し付けるみたいだけど、
1人分も2人分も用意するのは変わらないから』

『結城さんが?』

『朝食くらいは自分で、
夜も時々は作って食べています』
菜々美は契約時に運ばれてきた夕食の事を思い出し、結城の意外な一面をみた気がした。

『君が食べて支度する頃に駐車場に降りてますよ』

『ごめんなさい…』

『気にしなくていい、
俺の業務はもう始まっているから』

結城はネクタイをなおし部屋を後にする。

菜々美は彼が用意した朝食に口をつけ始めた。
『男の人に朝食を用意してもらうなんて…初めて…』
菜々美の心はざわついた。
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