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夜想曲~瑠璃色の奇跡~
第3章 其の一ー3・隠れ別荘~里心~
京都‥京…
懐かしい話・・・・・
「保護してくれた人は髪の長い男の人だったと思うわ
私を抱き上げて
"もう大丈夫ですよ"
って言ってくれたと思う
そして私を暖かい場所に連れて行ってくれた‥それにもう1人、同じように髪の長い人に連れられて何処か‥あの人の家だったのかしら?其処に連れて行って着替えさせてくれて優しい言葉を掛けてくれた」
「・・・・・」
コトンと私もティーカップを置く・・・
「後覚えているのは、冬空の中長い髪の女の人に手を引かれ私の両親を探している姿…
隣には番傘を差した私を保護してくれた男の人、一緒に歩いて一軒一軒探し回って・・・・・
途中で疲れたでしょうって甘味屋でお団子を食べた
それと‥歌‥子守歌‥
綺麗な声で優しく落ち着く不思議な声、小さかった私を安心させてくれて‥暖かい家だったと思う」
「・・・そんな事があったのですか・・・」
「・・・蒼さんは・・・その女の人に似てるの・・・
うろ覚えだけど、確かに蒼さんそっくりだったわ」
「・・・・・
与謝野先生の子供の頃の話ですよね?
私産まれていません」
「そう‥そうよね…
御維新前の話ですもの・・・」
そう言って先生はまたティーカップを手に……
「あれから何十年の話ですもの、でも今でも持っている赤い着物と手鞠…
どうしても捨てられない思い出よ」
「優しい人だったのですね…」
「そうね、優しい人だったわ
両親と再会して、優しく手を振って見送ってくれた‥それが最後に見た姿……
後になって‥大人になって京都に行って探したけれど見つけられなかった‥まるで幻‥」
「思い出は思い出のままにとも言います与謝野先生
思い出だからこそキラキラ光る」
「思い出だからこそ・・・」
後は何も語らずお茶を飲んで…
午後のひと時を思い出に浸って・・・
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