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夜想曲~瑠璃色の奇跡~
第5章 其の一ー5・隠れ別荘~均衡と捌け口…


今日の先生は少々不味いかも知れない…


福沢先生‥政治的にも力のある改革論者

『学問ノススメ』

で文壇では有名だが、大学を創設教え子達を政治の世界に入れ、福沢派なんて言われている

それに‥福沢先生の危険性をいち早く感じ取った伊藤博文が早くから対立、私に取っては両刃の剣‥

バレる事は無いとは思うけど、もし長財関係と繋がりがあると知れたら…

皆の立場を悪くする気は無い、離れていても仲間と言ってくれる人達だから……


「福沢先生という事は‥あの部屋を使うのよね……」

もう1つの懸念、それは福沢先生の性癖…

世の中上の人間程性癖は悪い、福沢先生も例に漏れず……

「・・・仕方がない、此処に居るんですもの…」

今日は和服では無くワンピースに軽くショールを羽織っている、理由は後で分かる事
一応今日の新聞に目を通しながら、これから来る福沢先生を待つ事にした・・・



「・・・先生‥お久しぶり・・・」

「ああ…
中々暇が作れん、蒼は相変わらずのようだな…」

「はい、私は変わりありません、先生何時もの部屋ですか?」

「・・・そうだな、今日は蒼をじっくり堪能したい」

「・・・こちらへ・・・」

福沢先生は玄関でのお出迎え、普通は先生の方から部屋に来るのだが、福沢先生には出迎えしなければならないワケがある

お客様は2階の部屋でおもてなしするのが普通なのだが、一部どうしてもと言うお客様用に特別な部屋が存在する


「先生‥足元お気を付けて…」

今歩いているのは地下への階段、電気が普及したとはいえ灯りはそう明るくは無い

少し薄暗い階段を下りた先の廊下に扉が3つ、その1つを開けて電気を点けた…


「此処は相変わらずだな」

「先ずお酒になさいますか?」

「ああ‥飲んでゆっくりと楽しむのも良いだろう」

「はい・・・」

先生はソファーに座り、私は隣の部屋にお酒を取りに行く

客間は先生が入った1部屋のみ、後は酒蔵と貯蔵庫
1部屋なのも意味があるのだけど……

酒蔵からワインを選び、部屋に戻り備え付けの小さいバーカウンターからグラスを取り出し先生の元へ…

「赤ワインか…」

「先生お好きでしょう?」

「まぁな……」

静かな地下にワインの注ぐ音だけが広がる、これから始まる事の前触れのような赤いワインの音だけが・・・
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