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夜想曲~瑠璃色の奇跡~
第6章 其の一ー6・隠れ別荘~軍人と医者の目~
「いらっしゃいませ‥あら森先生…」
2階の一間に座っていたのは、作家であり軍人であり医者の森鴎外先生…
今日は軍の帰りか軍服姿、それも森先生は地位も高い
懐かしい将校の軍服姿、今はどうして居るか・・・
「久しぶりに時間が空いてね、懐かしく討論に耳を傾けていたよ…」
「先生は忙しい方ですから…」
「軍医だが暇とは言えんな‥こんなご時世だからね」
「・・・そうね・・・
戦争だもの・・・」
慣れた手付きで紅茶を淹れ森先生の元に…
独国留学もしている先生は、洋風の物を好む傾向がある
「良い香りだ…
ここは落ち着く、久々に草案くらいは書いて帰るか…」
「新しい小説??」
「ああ…
討論を聞いていたら、俺も創作活動に火が点いたか?
軍もあるから仕上がりは少し先だろう」
「偉いお医者様だもの…先生の腕は確かだと皆言っているのを耳にするわ」
「誉め言葉と受け取っておこう」
「本当の事を言ったまでよ?」
作家もさることながら、医者としての腕も有名…
西洋医術に精通し、東洋医学にも詳しい
一時は松本良順と言い争ったとも聞いているけれども……
「・・今日は珍しく陸軍本部に呼ばれて山県総大将閣下と面会して来た、流石は歴戦に名を連ねる閣下だ、ありとあらゆる方向から軍を政治を見ている」
「凄い…
先ずお目に掛かれる方じゃないと聞いているのに…」
「お忙しい方だからね、軍に政治とあらゆる事をこなし実績も確か、明治政府も閣下が居れば安泰…」
文武両道だから‥あの人は…
昔からそうだった、長州時代から・・・
「そんな偉い方に呼ばれる森先生も凄いわ、先生も偉い方だもの…」
「俺は軍医で軍人しか見ていない、時々軍人の道で良かったのか悩む時はある…
軍医では無く普通の医者として貧しい人々を助けた方が良かったのでは無いのか?
街の暮らしを聞けば聞く程そう思う時がある」
「先生・・・・・」
「ふっ…
愚問だ‥軍医の道を目指したのは俺自身だというのに…
蒼‥紅茶をもう一杯貰えるかね…」
「・・・はい・・・」
立ち上がりティーポットにお湯を注ぐ…
先生は紅茶にはかなり拘りがある、今日も密かに一番詰みのダージリンを用意した……
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